2026年10月更新 · 出典は末尾に
日本語の「盆景(ぼんけい)」は、砂や土で風景を作る日本の盆景を指すことがあります。このページで扱うのは中国の盆景で、それとは別のものです。
「盆景」ということばの意味
「盆(pén)」は鉢や盆、「景(jǐng)」は景色やながめのことで、合わせると「盆の上の景色」になります。ハンティントン図書館は、盆景を「鉢の中の風景、または情景」と簡潔に説明しています。同館の中国庭園には、盆景のコレクションがあります。
要になるのは「景」の字です。盆景のよしあしは、木の姿だけでは決まりません。自然を描いた一枚の絵としてどうかが問われます。
盆景の歩み
起源は約2000年前とする説
ハンティントン図書館で中国庭園の学芸員を務めるフィリップ・ブルームは、中国の盆景の始まりをおよそ2000年前としています。2〜3世紀の墓の壁画に盆景が描かれていることも、ブルームが指摘しています。ただし、正確な起源は分かっていません。
唐代の壁画
初期の盆景を描いた絵として、もっともよく挙げられるのが章懐太子(李賢)の墓の壁画です。太子は706年、乾陵の陪葬墓に改葬されました。壁画には、小さな風景や鉢植えの木を運ぶ従者たちが描かれています。
日本へ伝わり、盆栽になる
ハンティントン図書館は、盆景が日本へ伝わった時期を700年ごろとし、運んだのはおそらく僧や商人、外交使節だったと述べています。一方、モントリオール植物園は10世紀としています。日本で盆景は盆栽となり、12世紀からは禅の影響で簡素さを求める方向へ進みました。
明・清の時代、立体の絵画へ
明と清の時代には、画家の構図を立体で再現するように盆景が作られました。中国非物質文化遺産網は、盆景と山水画が互いに影響を与え合ってきたと説明しています。
樹木盆景・山水盆景・水旱盆景
盆景の名手として知られる趙慶泉(ちょう・けいせん)は、盆景を三つの種類に分けています。全米盆栽財団(National Bonsai Foundation)の記事で紹介されている分類です。
樹木盆景(shùmù pénjǐng)
一本または数本の木を鉢に植え、年を経た野生の木のような姿に仕立てます。三つのうち、盆栽にもっとも近い種類です。
山水盆景(shānshuǐ pénjǐng)
「山水」は文字どおり山と水を指します。切った石を山や島に見立てて据え、小さな植物を添えます。水を張った浅い盆を使うのが一般的です。
水旱盆景(shuǐhàn pénjǐng)
木と岩、土、水を一つの盆に組み合わせ、岸辺の景色をまるごと作ります。人や舟、あずまやをかたどった小さな置物を添えることもよくあります。
このほか中国の資料には、元代から見られるようになった、ごく小さな盆景「些子景(xiēzi jǐng)」も記されています。
地方ごとの流派
盆景は地方ごとに流派が分かれ、木の仕立て方もそれぞれ違います。香港教育局と中国非物質文化遺産網は、伝統的な流派として五つを挙げ、南の嶺南派と、北の川派・揚派・蘇派・海派に分けています。このうち揚派・蘇派・海派の三つは、かつて江南派と総称されていました。
| 流派 | 地域 | 特徴 |
|---|---|---|
| 嶺南派 | 広東省(広州周辺) | 「截幹蓄枝(jié gàn xù zhī)」。曲げずに切ることで枝を作る技法。絵画の嶺南派の影響 |
| 揚派 | 江蘇省 | 棕櫚の繊維で縛って曲げる「一寸三彎」(一寸に三つの曲がり)。葉を平らな雲の層(雲片)に整える仕立て |
| 蘇派 | 江蘇省 | 「粗紮細剪」(粗く縛り、細かく切る)。絵画に由来する古雅で上品な姿 |
| 海派 | 上海 | 定まった型のない、中国画に倣った自由な作風。棕櫚の繊維に代えて金属の針金を使用。扱う植物の種類の幅広さ |
| 川派 | 四川省 | 棕櫚の繊維による強い曲げ、爪のように露出した根(懸根露爪)、高く切り立った岩の山水 |
香港教育局の資料には、ほかに二つの流派も載っています。竜が泳ぐような姿の梅の古株(游龍)で知られる安徽省の徽派と、揚派の東の分派にあたる南通の通派です。
嶺南派の「截幹蓄枝」
Bonsai Clubs International の解説によれば、手順は次のようなものです。幹を切り詰めたら、新しい芽を伸ばして次の一節にし、伸びたところでまた切ります。一節ごとに前の節より短く、向きも変えながら繰り返し、枝も同じやり方で作ります。
仕上がった木には、厳しい環境を生き抜いてきたような、角ばって先へ行くほど細くなる線が現れます。それを針金なしで作り出せるのが、この方法の特徴です。生育期の長い南の地方で、生長の速い木に向いています。生長が遅く枝葉の詰まった木は、今でも曲げる方法で仕立てます。
水墨画とのつながり
盆景は、しばしば「無声の詩、立体の画」と呼ばれます。仕立ての決まりも山水画から借りたもので、「咫尺千里」(わずかな広さに千里の景色を収める)や「小中見大」(小さなものの中に大きなものを見る)がその例です。
ハンティントン図書館のブルームは、庭園の白い壁に映る木々の影を「壁の上で動いている水墨画のよう」と言い表しています。
使われる木
盆景にはさまざまな木が使われます。次の木は、各流派の資料や博物館の展示に名前が出てくるものです(括弧内の漢字は中国での名前)。
- アキニレ(Ulmus parvifolia、榔楡)などのニレの仲間
- クロイゲ属(Sageretia)とフクマンギ(Carmona、福建茶)。どちらも嶺南派の定番
- ガジュマルなどのイチジク属(Ficus、榕)、ツゲ(黄楊)、ツツジ(杜鵑)、ゲッキツ(Murraya、九里香)
- 蘇派で使われるトウカエデ(三角楓)とザクロ(石榴)
- モントリオール植物園のコレクションにあるサルスベリとイロハモミジ
- ウメ(Prunus mume、梅)。中国全土で愛され、徽派の古株の題材
ゲーム Mojing 墨景と盆景
Mojing 墨景(モジン)は、水墨画風に描かれた盆栽シミュレーターです。名前は「盆景」の「盆」を「墨」に替えた言葉遊びで、「墨の景色」を意味します。
梅の木が一本、光に向かってリアルタイムに育ちます。剪定、芽摘み、針金かけで枝を整え、鉢を回して日の当たり方を変えます。一年は一分で過ぎていきます。長方鉢の中で、木のまわりに石や苔、草を置くこともできます。種類でいえば樹木盆景で、そこに景色づくりの第一歩となる石が加わります。
盆景と盆栽の違いは、別ページ「盆景と盆栽の違い」にまとめています。
出典
- ハンティントン図書館「The Art of Penjing」(Verso):huntington.org/verso/art-penjing
- 中国非物質文化遺産網、盆景技芸の項目:ihchina.cn/art/detail/id/10519.html
- 香港教育局、南蓮園池の盆景流派に関する教材:edb.gov.hk(倫理・宗教科の資料)
- 全米盆栽財団(National Bonsai Foundation)、趙慶泉に関する記事:bonsai-nbf.org
- Bonsai Clubs International、嶺南派の截幹蓄枝についての記事:bonsai-bci.com/articles/3105
- Espace pour la vie、モントリオール植物園の盆景コレクション:espacepourlavie.ca
- ミシガン大学マタイ植物園「Asian origins」:mbgna.umich.edu/asian-origins
- Wikipedia「Penjing」「Crown Prince Zhanghuai」(706年の改葬について。Hu Yunhua『Chinese Penjing』Timber Press、1987年を典拠とする)